「サービスごとに別のメールアドレスを登録する」運用を始めたことをきっかけに、個人メールのホスティング環境を 2 回移行しました。最終的に Fastmail に落ち着いたので、それぞれの環境で何に困り、なぜ乗り換えたのかをまとめます。
サービスごとにメールアドレスを分ける理由
目的はセキュリティ強化です。すべてのサービスに同じアドレスを登録していると、どこか 1 か所から流出しただけで、スパムやフィッシング、リスト型攻撃の入口になってしまいます。
サービスごとにランダムなアドレスを使い分けると、
- 流出元がわかる:不審なメールが届いたら、そのアドレスを登録したサービスが漏洩源だと特定できる
- 被害を局所化できる:漏れたアドレスだけ捨てれば済む
- ログイン ID を推測されにくい:メールアドレス = ログイン ID のサービスが多いため、アドレスが分かれているだけで攻撃のハードルが上がる
というメリットがあります。ただし、この運用はメール基盤側にそれなりの機能を要求します。以下はその試行錯誤の記録です。
第 1 世代:さくらのレンタルサーバー
もともと個人ドメインのメールは、さくらのレンタルサーバーでホスティングしていました。メインのアドレスを普通に使っている分には、まったく問題ありませんでした。
つまずいたのは、サービスごとにアドレスを作る運用へ切り替えてからです。さくらのレンタルサーバーでは、メールアドレスを作成するとアドレスごとに「ユーザー」が作られ、メールを読むにはそのユーザーごとにログインし直す必要があります。アドレスが増えてくると、これはとても現実的ではありません。
転送でしのごうとしたが……
そこで、各アドレスに届いたメールをバックグラウンドのメインアドレスへ転送する設定にしました。一元的に読めるようにはなったものの、今度は転送に時間がかかるという問題が発生。
特に致命的だったのが 2 段階認証です。ワンタイムコードのメールは有効期限が数分しかないことが多く、転送遅延のせいで認証がスムーズに通らないことがありました。
第 2 世代:Cloudflare Email Routing
次に採用したのが Cloudflare Email Routing です。ドメインを Cloudflare で管理していれば無料で使え、独自ドメイン宛のメールを任意の宛先へ転送してくれます。
- サービスごとのランダムアドレスを気軽に発行できる
- 受信面では特に困らず、2 段階認証も問題なし
- 無料
と、しばらくは快適に運用できていました。
「登録アドレスから送信してください」問題
壁にぶつかったのは、利用中のサービスへ問い合わせをしたときです。本人確認のため「登録しているメールアドレスから送信してください」と求められることがあります。
Cloudflare Email Routing は受信(転送)専用のサービスで、送信機能がありません。発行したアドレスを送信元にしてメールを送る手段がなく、ここでメールホスティングの移行を再検討することになりました。
第 3 世代:Fastmail
移行先を探す中で出会ったのが Fastmail です。決め手は次の 4 点でした。
- メールボックスを複数作成でき、1 つのアカウントからすべて見られる さくら時代の「ユーザーごとにログイン」問題が解消。
- 転送方式ではなく直接受信 メールの到着がスムーズで、2 段階認証のコードも待たされない。
- 発行したアドレスを送信元にしてメールを送れる 公式サイト・公式アプリから、自分の任意のアドレスを From にして送信可能。Cloudflare Email Routing で困っていた問い合わせ問題がこれで解決。
- 料金がそれなりに安い 個人で使うには十分手頃な価格帯。
なお Fastmail には、ランダムなアドレスを手軽に発行できる「Masked Email」という機能もあり、サービスごとのアドレス分離運用と非常に相性が良いです。
3 サービスの比較
| さくらのレンタルサーバー | Cloudflare Email Routing | Fastmail | |
|---|---|---|---|
| 受信方式 | 直接受信(アドレス = ユーザー) | 転送 | 直接受信 |
| 複数アドレスの一元管理 | ✕(ユーザーごとにログイン) | ○(転送先に集約) | ○(1 アカウントで全て見える) |
| 受信の速さ | 転送運用にすると遅延あり | 問題なし | 問題なし |
| 発行アドレスからの送信 | ○(ただしユーザーごと) | ✕(送信機能なし) | ○ |
| 料金 | サーバー利用料に含まれる | 無料 | 有料(手頃) |
まとめ
- サービスごとにメールアドレスを分ける運用は、流出検知・被害の局所化に効果的
- ただしメール基盤には「複数アドレスの一元管理」と「発行アドレスからの送信」が求められる
- Fastmail はその両方を満たし、受信もスムーズなため、この運用の落としどころとしてかなり快適
同じように「サービスごとにアドレスを分けたいけれど、メール環境がついてこない」と感じている方の参考になれば幸いです。